2017/10/08
新潟駅から徒歩5分 「入れ歯専門外来」を持つりんご歯科医院から発信。
今から20年くらい前の話です。
僕が大学院を卒業して大学病院の入れ歯の講座にいた時に、ある入れ歯の患者さんの担当になりました。
今まで、ある開業医さんで入れ歯治療を受けていたそうですが、なかなかの難症例のため紹介されてきました。
その方は、当時60代後半の方で上顎は全ての歯を失っていて総入れ歯、下顎は両側の臼歯がないためそこに部分入れ歯が入っていました。
その方の歯茎はかなり痩せていて、上顎は完全にカパカパの入れ歯のため話をするたびに落ちてくるような状態でした。
その方は、言う言葉も荒く神経質な感じもありました。
「お前のような若い先生じゃ、俺は不安だよ。」と仰っていました。
僕は「一生懸命、やりますので、何卒よろしくお願いいたします。」とただ一生懸命に入れ歯のための型を取り、咬み合わせを取っていきました。
いざ、セットとなった時、その患者さんは「お、なかなかいいじゃないか。結構、見直したよ。」と言いました。
その頃になると、僕もこの荒っぽさに慣れてきて結構言うようになっており、「○○さん、ありがとう。でも、まだそれを言うのは早いよ。食べてみないとはっきりしたことは言えないよ。」と言いました。
それから、何度かの調整を終えて、6ヵ月毎のメンテナンスに移行しました。特に大きな問題もなく入れ歯を気に入って使ってくれていました。
それから3年ぐらいして、僕が大学病院を辞めて離れるちょっと前にちょうどメンテナンスの時期と重なり、その方はメンテナンスに来られました。
僕は、今までの事からもしっかり挨拶をさせて頂き、後任の後輩を連れて本人の前で注意事項を申し送りしました。
その時にその人は「そうか。。。俺を置いてここを辞めちゃうのか。。。」と少し涙ぐんでいるようにも見えました。
「後任の先生は腕もいいし、優しいから大丈夫だよ。」と言ってその場を後にしました。
それから、次の勤務先の佐渡ヶ島にある病院で勤務して半年ほど経った時、その患者さんから電話がありました。
その内容は「今の先生も悪くないのだが、やっぱりあなたじゃないとダメだ。佐渡まで行くから診てくれ。」と仰っていました。
その時の僕は、さすがに佐渡までメンテナンスに来てもらうのはあまりにも大変であろうと思い、「いやいや、佐渡に来るのは大変だから。大学で診てもらってください。」と言って電話を切りました。
少し申し訳ないようにも感じましたが、僕としては気遣ったつもりでいました。
それから2年半して佐渡を離れ、新潟市江南区の歯科医院に勤めていた時に、突然、その患者さんはそこの医院に人伝で僕に会いに来てくれました。
そして、「また入れ歯を作ってくれ。もう、佐渡にいるからという理由は使えないでしょ。」と笑って言ってくれました。
この時は、本当に嬉しかったです。
そこまでして、僕に会いに来てくれて。。。もう、先生と患者ということを飛び越えて、友情というか親子というか、なんとも言えない感情が僕達の間にはあるのだなと感じましたよ。
それから、3年ほどして僕は開業しました。
その方は、開業当初、外来の方に来てくれていましたが、現在は訪問診療に伺わせていただいています。
ここ最近は、体調の関係でお会いできていませんが。。。
今度は、その方の体調を見て、僕がその方を「追っかけ」ていく番ですね。。。
歯科医師と患者の仲にも一期一会、お互いに誠意を尽くして尊重していく関係が構築されれば、お互いに幸せですね。
※明日は休日のため、ブログもお休みとさせていただきます。