僕が、総入れ歯治療に魅せられた理由。(1)

院長ブログ

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僕が、総入れ歯治療に魅せられた理由。(1)

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新潟駅から徒歩5分 「入れ歯専門外来」を持つりんご歯科医院から発信。 

 総入れ歯治療の出会いは、卒業する前の年の病院実習の時です。補綴科という科(入れ歯や被せ物を専門とする科)を回っていた時に、担当の先生が患者さんに総義歯をセットするところに立ち会えた時です。その先生は上下顎の総入れ歯を患者さんにセット、調整を行っていました。当時の僕は、漫画で見ることがあるように入れ歯はくしゃみをすれば外れてしまい、口の中から飛び出すものと思っていました。でも、その先生の入れ歯は違っていました。今、思えば、この先生も凄く上手くいった症例なので僕達に見せたかったのでしょう。
 
 その入れ歯は凄くくっついていて取り出すのにかなり抵抗力があり、何とか引っ張って取り出そうとした時に「クチュッ」といって脱離に対して明らかに抵抗感がありました。
 その先生は、「総入れ歯は外すときに、こういう抵抗感がなければダメなんだよ。」と言って、患者さんに感謝されて、治療を終えました。患者さんを見送った後に、僕は、その先生に失礼ながら「あの入れ歯の抵抗力は印象(型取り)が上手くいったから、できたんですよね。流石ですね。」と思わず言ってしまいました。その先生は、ムスッとしながら「馬鹿だな、お前は。あの入れ歯は型取りが上手くいったから、できた時にくっついていると思っているの?それだけで、くっつきのいい入れ歯ができるのなら、苦労はねえよ。」と言われてしまいました。この言葉の意味が、学生であった僕は全く解らず、友達に「あの先生って変だ。入れ歯の型取りが上手だから、良い入れ歯ができたんですね。って言っただけで怒られた。」と漏らしていました。
 
 でも、その後に病院実習を重ねていたある日、僕を怒ったその先生から飲み会に誘われ、話をする機会を得ました。その時に、あの時ああいったのは何故ですかと、懲りない僕はまたしても聞いてしまいました。その先生は、酒に酔っていたのかいつもは博学でスマートなイメージだったのですが、この時は真っ赤な顔してニコニコしながら「いいか総入れ歯は、全てのステップが大切なんだ。どれ一つもおろそかにできない。でも、特に大切なのは、咬み合わせだよ。これが、ダメだとどうにもならない。総入れ歯の場合、型取りはどのステップでも咬合圧印象という手段で何とか対応できるから、それよりも何よりも咬み合わせをしっかり与えられる歯科医師になることが大切なんだぞ。」と熱く話してくれました。僕はその先生が語ってくれた、自分が咬み合わせを与える。。。ということに格好良さを感じ、歯科医師になったら総入れ歯の科に在籍し、この先生を支持し、この先生のようになろうと思いました。
 
 その時の決意は変わらず、卒業後は歯科医師になってから総入れ歯の科に大学院生として4年間在籍し、その後は助手から講師になるまでの6年間、合計して10年間入れ歯診療に頑張ってきました。その先生のように今はできるのかと尋ねられると全然追いついてはおらず、その先生の事は今でも尊敬しております。
 僕は、歯科医師になって23年になりますが、この10年間はいろいろな人達との出会いがあり、今の自分を作った礎になった期間だと思います。