歯の豆知識 (2023年)
歯の豆知識 バックナンバー
亡くなる人が多い誤嚥性肺炎について・・・
誤嚥性肺炎」は誤って肺の方に食物や唾などが落ちてしまった後に起こる肺炎で「高齢者や脳血管障害の後に起こりやすいとされています。
確かに、高齢者は咳反射する能力も落ちますし、嚥下筋の筋力や咀嚼力、唾液量なども低下するため誤嚥が起きやすい状態となっているのですね。
また高齢者は器官の感覚低下から、不顕性誤嚥を起こしてしまい、発熱などの自覚症状も少ないまま肺炎を起こしているケースもあります。
以前は、肺炎の中に誤嚥性肺炎を含めていたため、肺炎で亡くなる方が悪性腫瘍や心疾患に次いで3位でしたが、今は1位悪性腫瘍、2位心疾患、3位老衰、4位脳血管疾患、5位肺炎、6位誤嚥性肺炎となります。
近年では誤嚥性肺炎で亡くなる方が多く、一般的な肺炎と区別する形で、誤嚥性肺炎として独立してカウントされるようになっています。それくらい身近な病気と言えますね。
誤嚥性肺炎の原因菌は口腔内細菌が多いと考えられています。治療は通常の細菌性肺炎と同様にペニシリン系抗生物質などを点滴することが多いようです。
原因菌の多くが口腔内細菌ということは、口腔内のケアが予防に繋がりますね。
早期発見と早期治療は重要です
季節の変わり目には体や口腔内に大きなストレスがかかり不調和をきたすことがあります。
その際に、このぐらいは大丈夫と自己診断で歯科医院に行かないでいると病状が進行したりすることは少なくないですね。自己診断で歯がしみるのは、知覚過敏だと思っていて、痛みに耐えられなくなって歯科医院でレントゲンを撮ってもらったら歯の隣接面からの虫歯が見つかり、虫歯菌が歯の神経にまで及び、歯の神経を取らなければならなくなってしまった。ということはしばしば日常の診療で見ることがあります。
確かに、一般の方には歯間部の虫歯はお口を開けて鏡で見てみても大変見つけにくいものではあります。でも、自己診断で決めつけることはせずに、歯科医院で診てもらうことは大切です。この方も早めに処置をすれば、歯の神経を取らずに済んだかもしれませんからね。さらに、口内炎だと思っていてずっと放置していたら、どんどん大きくなって歯科医院に行って診てもらったら、実は癌だったという話もたまに聞くことがあります。
その様なことにならないためにも、できるだけ不調和や痛みを感じたら、早めに歯科医院で診てもらうことをお勧めします。そして、必要な検査や処置を受けて、大事に至らぬようにするためにも早期発見・早期治療を心掛けるようにしましょう。
手術を行う前に、口腔内清掃しましょう
最近、「手術が決まったので、歯科治療をしてくるように外科の先生に言われて来ました」という患者さんがいます。
これは、全身麻酔科で外科手術を行うとき気道挿管する際に歯周病や虫歯があると、歯垢の中にいる細菌がチューブを通して肺に入り、肺炎をこしやすいので、それを防ぐためのものですね。
主に手術後の合併症で生じる恐れがあるのは誤嚥性肺炎や菌血症と思われます。口腔内の管理、清掃をきちんと行ってから手術を行うと、そうでない方に比べて入院日数が減ると言われています。心筋梗塞をはじめとする循環器系の手術のほか、胃がんや食道がんといった消化器系の手術、高齢者に多い大腿部の骨折の手術などでも、入院日数は減るというデータもあります。そのため、大きな手術の前に口腔内のお掃除を勧める医療機関が増えています。でも、もし大きな虫歯があって、歯の根の治療が必要となり、1回では終わらないケースとなると大変ですね。そのリスクを背負ったまま手術をしなければならないかもしれませんからね。
突然の手術になった場合にも対応できるように日ごろから、歯科健診を受けて管理していくことは大切だと思います。
歯科健診を受けましょう
政府は昨年の6月に発表した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、全国民に毎年の歯科健診を義務付ける「国民皆歯科健診」の導入検討案を打ち出しました。
現在、歯科健診が義務付けられているのは高校生までで、企業の健診や自治体での特定健診に含まれていることは少なく、大学生や社会人は基本的に自分で歯科医院に受けに行かなければならない状況です。
糖尿病や心臓の疾患など全身の病気にも影響する歯周病の健診は大半の自治体で40歳から受けられますが、受診するのは20人に1人だけとされており、まだまだ受診率は低い状態です。
口腔内の病気の虫歯や歯周病は全身の健康にも深く関わっています。歯科健診の受診率の低さが生活の質の低下にもつながることが懸念されていますので、是非、歯科健診を受けていただきたく思います。